（ 2011/10/31） くい

　

杭で貫かれて息も絶え絶えのあの白いひとが、身動き取れずにいる。
いままでの血に溺れそうになりながら、しかしもう自ら杭を引き抜くのは諦めていた。
このままこんなきれいないきものを死なせてしまうわけにはいかぬと、血でぬめる手で杭を抜こうと試みた。
杭を引くたびこのひとは苦しそうに、眼がひっくり返りそうになって、それでもなおうつくしかった。
しまいには杭にしがみつくようになりながら、なんとか引き抜いた。
そのひとは薄く眼を開けてたゆたっていた。



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わたしはもうわたしにあいたくない。