「大丈夫か?ほらこっちで口をゆすごう。
立てるか?」
中略
「おれは小さなころからよく不安になって夜中に吐いていた。
父親はおれの背中をずっとさすってくれていた。
父親とおれしかいなかったんだ。
でもあくる日、おれが浴室のカーテンを開けるとそこで父親は死んでいた。」
中略
「母親はどうしたの?」
「知らない。父親も何も言わなかった。おれも何も聞かなかった。
おれは母親ってものは子供が物心つく前に自然といなくなってしまうものだと思っていた。
そういうものだと。」
「大丈夫よ、わたしはずっとここにいるわ。」
そう言った女を見ながら、おれは思っていた。
もうしばらくすればここにはおれと赤ん坊だけが残されるのだと。
おれとおれが。
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コレグライダー。